造園業は建設業?サービス業?|制度ごとの分類を比較・剪定と造園工事の境界【2026年版】
「造園業は建設業ですか、それともサービス業ですか」
この質問に一言で答えられないのが、造園業の厄介なところです。制度ごとに分類が違い、しかも同じ事業者の中でも仕事の内容によって分かれます。消費税の納付額、許可の要否、保険の加入可否がここで変わるので、なんとなくで済ませると損をしたり、必要な手続きを見落としたりします。
この記事では、制度ごとの分類を国土交通省・国税庁・厚生労働省の資料で確認し、自分の仕事がどちらに寄っているかを判断できるように整理します。
結論(先に要点)
- 境界は「築造・植栽」か「手入れ」か。庭を造る仕事は建設、木を手入れする仕事はサービスに寄ります
- 建設業法の「造園工事」の例示に、剪定は入っていません(植栽工事、景石工事、園路工事などが例示)
- **消費税の簡易課税では、造園工事は第3種(70%)、植木の剪定は第4種(60%)**と国税庁が明記しています
- 500万円未満(税込)の工事だけなら建設業許可は不要です
- 両方やっている場合は、売上を分けて把握しておくのが結局いちばん楽です
1. 建設業法での造園工事とは
まず建設業法です。建設工事は29業種に分かれており、造園工事業はその1つです。さらに造園工事業は指定建設業(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業の7業種/建設業法施行令第5条の2)にも定められています(国土交通省「建設業の許可(許可の要件)」)。国土交通省の告示は、造園工事の内容と例示を次のように定めています。
造園工事: 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事
例示: 植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事
●「緑地育成工事」とは、樹木、芝生、草花等の植物を育成する建設工事であり、土壌改良や支柱の設置等を伴って行う工事である。
— 国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」(平成29年11月10日改正)
読み取れるのは次の点です。
- 造園工事の中心は築造・緑化・植生の復元であること
- 例示に並ぶのは植栽工事、景石工事、園路工事といった造る仕事
- 植物を育てる「緑地育成工事」も、土壌改良や支柱の設置を伴うものとされている
単独の剪定や草刈りは、この例示に入っていません。 庭を造る、緑化する、傷んだ植生を戻す。これが建設業法上の造園工事です。
建設業許可が要るのは500万円以上の工事から
許可が必要かどうかは、金額で決まります。
「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよい
[2] 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
※上記金額には取引に係る消費税及び地方消費税の額を含みます
— 国土交通省「建設業の許可とは」
個人宅の庭の手入れが中心なら、1件500万円を超えることはまずありません。一方、外構をともなう庭園の新設や、法人・公共の緑地工事を請けるようになると許可が視野に入ります。金額は税込で判定する点に注意してください。税抜490万円でも、税込では539万円で基準を超えます。
資格や許可の全体像は「造園業の資格・免許一覧」で解説しています。
2. 消費税(簡易課税)での分類
次に消費税です。ここは納付額が直接変わるので、いちばん影響が大きい制度です。国税庁は日本標準産業分類にもとづく事業区分で、園芸サービス業についてこう示しています。
園芸サービス業〔014〕 おおむね 第四種事業
庭師が行う植木の剪定は第四種事業に該当する。
造園工事(庭園造りを含む。)を請け負う事業は第三種事業に該当する。
— 国税庁 質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-A農業、林業、B漁業、C鉱業、採石業、砂利採取業、D建設業)」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)
みなし仕入率は第3種が70%、第4種が60%です(国税庁 No.6505 簡易課税制度)。
| 仕事の内容 | 事業区分 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 造園工事・庭園造りの請負 | 第3種事業 | 70% |
| 植木の剪定など庭の手入れ | 第4種事業 | 60% |
建設業法の「造る仕事か、手入れか」という線引きと、同じところで分かれています。 これは偶然ではなく、どちらも日本標準産業分類で造園工事業(建設業)と園芸サービス業(農業関連のサービス)が別に置かれていることに由来します。
売上500万円(消費税50万円)なら、第3種と第4種で納付額が5万円違います。インボイス登録をしている方の判断は「造園業のインボイス制度対応ガイド」で詳しく解説しています。
3. 労災保険(一人親方の特別加入)はどうか
一人親方が労災保険に特別加入できる事業は、厚生労働省のしおりで列挙されています。建設関係は次のとおりです。
② 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは、解体又はその準備の事業(大工、左官、とび職人など)
④ 林業の事業
— 厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」
この一覧に「造園業」という言葉はありません。 ②に例示されているのは大工・左官・とび職人で、④は林業です。
ここまで見てきた線引きを当てはめると、次のように整理できます。
- 庭園の築造や外構をともなう造園工事は、②の「工作物の建設」に近い仕事です
- 剪定や草刈りだけを請け負う働き方は、②の例示からも④の林業からも距離があります
つまり同じ「造園業の一人親方」でも、実際にやっている仕事によって判断が分かれる可能性があります。ここは一次資料に明示がない以上、断定できません。加入を検討する場合は、所轄の労働基準監督署か、加入しようとする特別加入団体に、自分の作業内容を具体的に伝えて確認してください(厚生労働省「労災保険への特別加入」)。
なお特別加入のしおりには、造園業者に関係する重要な例外もあります。
※労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。
— 同しおり
繁忙期だけ人を雇う働き方でも、日数が100日未満なら一人親方としての加入の道があるということです。
4. 制度ごとの分類まとめ
| 制度 | 造園工事(築造・植栽) | 剪定・草刈り(手入れ) |
|---|---|---|
| 建設業法 | 造園工事業(29業種の1つ) | 例示に含まれない |
| 建設業許可 | 1件500万円以上(税込)で必要 | 建設工事に当たらない |
| 消費税・簡易課税 | 第3種事業(70%) | 第4種事業(60%) |
| 労災の特別加入 | 建設の事業に近い | 判断が分かれる(要確認) |
5. 自分の仕事はどちらに寄っているか
判断の目安です。売上のどちらが大きいかで考えてください。
建設(造園工事)に寄っているサイン
- 植栽・移植・景石の据付け・園路・ウッドデッキなど、形を造る仕事が中心
- 図面や仕様書をもとに見積りを出すことがある
- 元請けや工務店から現場ごとに発注される
- 1件の請負金額が数十万円〜数百万円になることがある
サービス(園芸サービス)に寄っているサイン
- 個人宅の定期的な剪定・消毒・草刈りが中心
- 年1回・年2回の作業をお客様と直接契約している
- 1件あたり数万円で、件数を重ねて売上を作っている
- 材料をほとんど仕入れず、技術と時間で稼いでいる
なお、材料をあまり仕入れない働き方の場合、簡易課税のみなし仕入率が低い区分(第4種60%)でも、実額で計算する本則課税より有利になることが多い点は変わりません。区分が第4種だから不利、という単純な話ではありません。
6. 両方やっている場合はどうするか
多くの造園業者は、実際には両方やっています。その場合の要点は3つです。
- 売上を分けて記録する。消費税の事業区分は事業者単位ではなく、それぞれの売上ごとに判定します。「工事」と「手入れ」で分けて集計できるようにしておきます
- 1種類が75%以上なら特例が使える。2種類以上の事業を営む場合でも、1種類の課税売上高が全体の75%以上を占めるなら、その区分のみなし仕入率を全体に適用できます(国税庁 No.6505)
- 見積書の段階で分けておくと後が楽です。「植栽工事一式」と「剪定作業」を同じ見積書に混ぜて書かず、品目を分けておけば、集計もそのままできます
見積書の品目の分け方は「造園業の見積書の書き方ガイド」で解説しています。
よくある質問
Q. 剪定しかしていませんが、建設業許可は取れますか?
許可は「建設工事を請け負う」ために受けるものです。剪定のみであれば、そもそも許可を要する建設工事に当たりません。将来的に植栽工事や外構を請けるようになったときに検討することになります。
Q. 造園工事業の許可があれば、剪定の売上も第3種になりますか?
いいえ。消費税の事業区分は許可の有無ではなく、それぞれの売上の内容で判定します。許可を持っていても、剪定の売上は第4種として扱われることになります。判断に迷う場合は税務署にご確認ください。
Q. 産業分類が違うと、他にも影響がありますか?
統計調査の区分や、補助金・助成金の対象業種の判定で使われることがあります。募集要項で「建設業」「サービス業」のどちらが対象かを確認してください。
出典
- 国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」(平成29年11月10日改正)— 造園工事の内容と例示、緑地育成工事の定義
- 国土交通省「建設業の許可とは」— 軽微な建設工事(建築一式以外は500万円未満・税込)
- 国土交通省「建設業の許可(許可の要件)」— 指定建設業7業種、専任技術者の要件
- 国税庁 質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-A農業、林業、B漁業、C鉱業、採石業、砂利採取業、D建設業)」— 園芸サービス業と造園工事の事業区分
- 国税庁タックスアンサー「No.6505 簡易課税制度」— みなし仕入率、2種類以上の事業を営む場合の計算と75%特例
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」— 特別加入できる事業の範囲、労働者を使用する日数の例外
- 厚生労働省「労災保険への特別加入」— 特別加入制度の概要
免責
本記事は2026年8月時点で公開されている国土交通省・国税庁・厚生労働省の資料に基づく一般的な解説であり、個別の判断を保証するものではありません。とくに労災保険の特別加入の可否は一次資料に造園業の明示がなく、作業内容によって判断が分かれます。実際の適用にあたっては、税務は税理士または所轄税務署、許可は許可行政庁、労災は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
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