年金をもらいながら造園業を続けるときの税金【2026年版】|確定申告は必要か・年金は減るのか
造園の仕事は、体が動くうちは続けられる仕事です。年金を受け取りながら、長年のお客様の庭だけは見に行くという方も多いでしょう。
そのときに気になるのが「確定申告はどうなるのか」「働くと年金が減るのか」の2つです。この記事では、国税庁と日本年金機構の資料をもとに整理します。
結論(先に要点)
- 年金は雑所得、庭仕事の収入は事業所得。2つを合算して確定申告する
- 「公的年金等の確定申告不要制度」は、事業所得が20万円を超えると使えません。仕事を続けている方はほぼ対象外
- 個人事業主として働く分には、在職老齢年金による年金の支給停止はありません(厚生年金保険の被保険者ではないため)
- 令和7年分から基礎控除が引き上げられており、所得が小さい年ほど控除が大きくなります
1. 年金と庭仕事の収入は、種類が違う所得
まず整理しておきたいのが、2つの収入の扱いです。
| 収入 | 所得の種類 | 計算方法 |
|---|---|---|
| 国民年金・厚生年金 | 雑所得(公的年金等) | 収入金額 − 公的年金等控除額 |
| 剪定・草刈りなどの売上 | 事業所得 | 売上 − 必要経費 − 青色申告特別控除 |
公的年金等について、国税庁はこう定めています。
公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
— 国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」
控除額は年齢(65歳以上か未満か)と収入金額で変わります。国税庁が挙げている計算例は次のとおりです。
(例)65歳以上、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額500万円、公的年金等の収入金額の合計額350万円の場合
3,500,000円×75%−275,000円=2,350,000円
— 同上
年金の受取額がそのまま所得になるわけではない、という点がまず大事です。速算表は上記の国税庁ページに掲載されています。
2. 「確定申告不要制度」は使えないことが多い
年金受給者には申告を省ける制度がありますが、仕事を続けている方は条件から外れます。
その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。
— 国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」
ここでいう「20万円以下」は売上ではなく所得(売上から必要経費を引いた額)です。造園業に当てはめると、こうなります。
| 状況 | 確定申告 |
|---|---|
| 年金のみ(仕事の所得なし) | 収入400万円以下なら不要 |
| 庭仕事の所得が年20万円以下 | 不要(ただし住民税の申告が必要な場合あり) |
| 庭仕事の所得が年20万円超 | 必要 |
剪定を数件受ければ所得20万円は超えます。「年金をもらっているから申告はいらない」と思い込まないことが一番の注意点です。
なお申告不要制度に当てはまる場合でも、国税庁は次のように注意しています。
公的年金等以外の所得金額が20万円以下で確定申告の必要がない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります。
— 同上
所得税の申告が不要でも、市区町村への住民税の申告は別です。お住まいの市区町村にご確認ください。
3. 働いても年金は減りません(個人事業主の場合)
「稼ぎすぎると年金が止まる」と聞いたことがあるかもしれません。これは在職老齢年金という仕組みですが、対象が限られています。
日本年金機構の説明では、在職老齢年金は厚生年金保険の被保険者である場合に、年金額と給与・賞与に応じて老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される仕組みです(日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」)。
個人事業主として庭仕事を続ける場合、厚生年金保険の被保険者ではありません。したがって、事業でいくら稼いでも、この仕組みによって年金が減ることはありません。
ただし次の場合は事情が変わります。
- 法人化していて役員報酬を受け取っている: 厚生年金保険の被保険者になるため、在職老齢年金の対象です
- 他社に雇われて働いている: 同じく被保険者になる可能性があります
自分がどちらに当たるか分からない場合は、年金事務所に確認してください。年金額そのものの計算や支給停止の有無は、日本年金機構が判断します。
4. 青色申告特別控除は続けられます
年金を受け取るようになっても、事業所得がある限り青色申告特別控除は使えます。
控除は事業所得から差し引くもので、年金(雑所得)からは引けません。それでも、複式簿記とe-Taxの要件を満たせば最大65万円(令和9年分の申告からは、優良な電子帳簿の保存などの要件を満たせば最大75万円)の控除になります。詳しくは「造園業の確定申告ガイド」で解説しています。
仕事を減らして売上が小さくなると、控除額のほうが事業所得より大きくなることがあります。その場合の控除は事業所得の金額が限度になるため、帳簿の手間と控除額のバランスを見て、簡易簿記(10万円控除)に切り替える選択もあります。
5. 令和7年分から基礎控除が変わりました
もう一つ、年金世代に効く改正があります。基礎控除が合計所得金額に応じた段階制になりました。
| 納税者本人の合計所得金額 | 令和6年分以前 | 令和7年分・令和8年分 | 令和9年分以後 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 | 95万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 48万円 | 88万円 | 58万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 48万円 | 68万円 | 58万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 48万円 | 63万円 | 58万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 48万円 | 58万円 | 58万円 |
(出典: 国税庁タックスアンサー「No.1199 基礎控除」)
ここでいう合計所得金額は、年金の雑所得と事業所得を合わせた額です。仕事を減らして所得が下がると、基礎控除は逆に大きくなります。
6. 仕事量を決めるときに見ておく数字
「どのくらいまで働くか」を考えるときは、税金だけでなく次も併せて見ておくと判断しやすくなります。
- 国民健康保険料: 前年の所得をもとに計算されます。金額の決まり方は市区町村ごとに違うため、役所の窓口で試算してもらうのが確実です
- 後期高齢者医療制度: 75歳以上はこちらに移り、保険料の計算方法も変わります
- 消費税: 基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら免税事業者です。仕事を減らしていく局面では該当することが多くなります。インボイス登録をしている場合の判断は「造園業のインボイス制度対応ガイド」をご覧ください
税金や保険料は「稼いだ以上に取られる」ことは基本的にありません。 手取りが逆転する心配より、体の負担と相談して決めるほうが現実的です。
よくある質問
Q. 年金から税金が引かれているのに、また申告するのですか?
公的年金等からは原則として源泉徴収されています(No.1600)。確定申告は、年金と事業所得を合わせて1年分の税額を精算する手続きです。源泉徴収された分は精算され、払いすぎていれば還付されます。
Q. 仕事を完全にやめたら、何か手続きが必要ですか?
廃業の届出が必要です。出す書類の一覧と順番は「造園業の廃業手続きガイド」で解説しています。
Q. 医療費が多くかかった年は?
医療費控除の適用を受けるために確定申告をすることができます。申告不要制度に当てはまる場合でも、還付を受けるための申告は可能です(No.1600 注1)。
出典
- 国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」— 公的年金等の所得計算、源泉徴収、確定申告不要制度
- 国税庁タックスアンサー「No.1199 基礎控除」— 令和7年分以降の基礎控除額
- 日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」— 在職老齢年金の対象
免責
本記事は2026年8月時点で公開されている国税庁・日本年金機構の資料に基づく一般的な解説であり、個別の判断を保証するものではありません。年金額の計算や支給停止の有無は年金事務所、税額の判断は税理士または所轄税務署、保険料はお住まいの市区町村にご確認ください。
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