造園業の廃業手続きガイド【2026年版】|出す届出の一覧と順番・インボイス登録の取り消し方
体がきつくなってきた、後を継ぐ人がいない、年を重ねて高所の作業がこわくなった。造園業を辞めるかどうかを考える理由は人それぞれですが、いざ決めたときに困るのが手続きの多さです。
出す書類を1枚忘れただけで、辞めたあとも税務署から書類が届き続けることがあります。この記事では、造園業(個人事業主)が廃業するときに必要な届出を、国税庁の資料をもとに順番に整理します。
廃業で出す届出の一覧
まず全体像です。自分に関係するものだけ出せば足ります。
| 届出書 | 出す人 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業を廃止したすべての人 | 廃業した日の属する年分の確定申告期限まで |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告をしていた人 | 取りやめようとする年分の確定申告期限まで |
| 事業廃止届出書(消費税) | 消費税の課税事業者・インボイス発行事業者 | 事由が生じた場合速やかに |
| 消費税課税事業者選択不適用届出書 | 課税事業者を選択していた人 | 同上 |
| 消費税簡易課税制度選択不適用届出書 | 簡易課税を選択していた人 | 同上 |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 従業員に給与を払っていた人 | 廃止の事実があった日から1か月以内 |
(出典: 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」「A1-9 所得税の青色申告の取りやめ手続」「D1-14 事業廃止届出手続」「No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合」)
廃業届の期限は「1か月以内」ではありません
よく「廃業から1か月以内」と説明されますが、国税庁の現在の案内では**開業・廃業等届出書の提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」**とされています。青色申告の取りやめ届出書も同じく確定申告期限までです。
とはいえ、期限に余裕があると忘れます。辞めると決めたらまとめて出してしまうのが確実です。
🔴 インボイス登録の取り消しは「事業廃止届出書」
ここがいちばん間違えやすいところです。インボイス(適格請求書)の登録をやめるときは「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出す、と覚えている方が多いのですが、廃業に伴う場合は違います。
なお、適格請求書発行事業者が事業の廃止に伴って適格請求書発行事業者の登録を取消す場合は、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書では無く、事業廃止届出書を提出してください。
— 国税庁タックスアンサー「No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合」(令和7年4月1日現在法令等)
事業をやめずにインボイス登録だけをやめる場合は「登録の取消しを求める旨の届出書」、事業ごとやめる場合は「事業廃止届出書」。この使い分けです。
消費税の届出は1枚にまとめられます
課税事業者だった方は消費税関係の届出書が何枚も並んで見えますが、実は全部書く必要はありません。
事業廃止により、「消費税課税事業者選択不適用届出書」、「消費税課税期間特例選択不適用届出書」、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」のいずれかの届出書に事業を廃止した旨を記載して提出した場合には、他の不適用届出書等および事業廃止届出書の提出があったものと取り扱われます。また、事業廃止届出書を提出した場合には、これらの不適用届出書等の提出があったものと取り扱われます。
— 同上
つまり該当する1枚に「事業を廃止した」と書いて出せば、残りは出したものとして扱われます。書類の枚数で気が重くなっている方は、ここだけ覚えておけば十分です。
廃業する年の確定申告
廃業した年も、その年の1月1日から廃業日までの所得について確定申告が必要です。翌年の2月16日〜3月15日に、通常どおり申告します。
このとき整理しておきたいのが次の3つです。
- 売掛金の回収: 廃業前に完了した作業の代金は、入金が翌年になっても廃業年の売上です。回収漏れがないか確認しておきます
- 未払いの経費: その年の12月31日までに債務が確定しているものは、支払いが済んでいなくても必要経費になります(国税庁 No.2210 必要経費の知識)
- 廃業後に発生する費用: 機材の処分費など、廃業したあとに支払いが生じるものの扱いは個別の判断になります。金額が大きい場合は税務署に確認してください
機材・車両をどうするか
造園業は道具が多い仕事です。刈払機、チェーンソー、脚立、高所作業車、軽トラック、そして倉庫の資材。処分の方法によって税務上の扱いが変わります。
| 方法 | 税務上の扱い | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 売却する | 譲渡所得または事業所得として計算 | 買取業者は複数当たると差が出やすい |
| 同業者へ譲る | 売却と同じ。無償なら贈与の論点が出る | 価格を決めた記録を残す |
| 廃棄する | 除却損として計上できる場合がある | 処分費の領収書を保管 |
| 私用で使い続ける | 家事用に転用した扱い | 帳簿から外す処理が必要 |
減価償却の途中の資産(40万円以上のもの)は帳簿に残っているので、どう処分したかを記録しておくと申告のときに困りません。取得価額の区分については「造園業の確定申告ガイド」で解説しています。
お客様の引き継ぎは早めに伝える
税務の手続きより先に考えたいのが、長く付き合ってきたお客様のことです。造園の仕事は年1回・年2回の定期作業が多く、「来年も来てくれる」前提で庭の手入れが組まれています。
- 次の剪定時期の前に伝える: 松の手入れやツツジの花後剪定など、時期を逃すと樹形が崩れる作業があります。適期の前に知らせると、お客様が次の業者を探す時間ができます
- 引き継ぐ業者を紹介できるとよい: 同業の知り合いに引き継げるなら、お客様の負担がいちばん小さくなります。庭ごとの作業の癖(この木は毎年ここまで詰める、この生垣は年2回)を伝えられると喜ばれます
- 作業の記録があると引き継ぎが早い: どの木にいつどんな作業をしたかの記録と写真があれば、引き継ぐ側がすぐ動けます
樹種ごとの作業適期は「庭木の剪定時期カレンダー」にまとめています。
後継者がいる場合(親族への承継)
息子さんやお弟子さんが継ぐ場合、個人事業では**「先代が廃業して、後継者が新規開業する」という形**をとるのが基本です。事業そのものを法人のように包括承継はできないため、次の整理が必要になります。
- 先代は廃業の届出、後継者は開業の届出と青色申告承認申請書を出す
- 機材や車両は、譲渡・贈与のいずれかで名義を移す。無償で渡すと贈与税の論点が出るため、金額の大きいものは事前に確認する
- 屋号や電話番号を引き継ぐと、お客様の混乱が少なくなる
- 建設業許可を受けている場合は、許可の承継手続きが別途必要
開業側の手続きは「造園業で独立するには?開業手順・費用・資格・集客を完全ガイド」で解説しています。
廃業する前に考えたい「縮小して続ける」選択肢
高所作業や重い機材の扱いがつらくなっただけなら、仕事の内容を絞って続ける道もあります。
- 高木の剪定と伐採はやめて、低木の手入れと草刈りに絞る
- 新規は受けず、長年のお客様の定期作業だけを続ける
- 体力の要る作業は同業者と組み、自分は見積りと段取りを担当する
売上が下がっても、基礎控除の引き上げ(令和7年分から合計所得金額に応じて最大95万円)により、所得が小さければ税負担も小さくなります。詳しくは「造園業の確定申告ガイド」をご覧ください。
年金を受け取りながら仕事を続ける場合の確定申告や、働くと年金が減るのかどうかは「年金をもらいながら造園業を続けるときの税金」で整理しています。
廃業は一度きりの手続きですが、縮小はいつでも戻せます。決める前に、辞めたい理由が「全部」なのか「一部の作業」なのかを分けて考えてみてください。
よくある質問
Q. 廃業届を出さないとどうなりますか?
事業を続けている前提で、確定申告の案内などが届き続けます。青色申告の取りやめを出さないと、申告のない状態が続くことになります。手続き自体は難しくないので、忘れずに出しておくのが確実です。
Q. 廃業したあとにお客様から頼まれた仕事を受けたら?
一時的・少額であれば雑所得として申告する形が考えられますが、繰り返し受けるなら事業として再開したことになります。判断に迷う場合は税務署に確認してください。
Q. インボイス登録だけをやめて事業は続けたい場合は?
その場合は「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します(国税庁 D1-70)。免税事業者に戻る判断については「造園業のインボイス制度対応ガイド」で解説しています。
出典
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」— 開業・廃業等届出書の提出時期
- 国税庁「A1-9 所得税の青色申告の取りやめ手続」— 青色申告の取りやめ届出書の提出時期
- 国税庁「D1-14 事業廃止届出手続」— 事業廃止届出書(消費税法第57条第1項第3号)
- 国税庁タックスアンサー「No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合」— 廃業時に必要な消費税の届出、インボイス登録の取り消し方、届出を1枚にまとめられる取り扱い
- 国税庁「D1-70 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出手続」— 事業を続けたまま登録だけをやめる場合
- 国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」— 従業員に給与を払っていた場合の届出(廃止の事実があった日から1か月以内)
- 国税庁タックスアンサー「No.2210 必要経費の知識」— 必要経費の算入時期
免責
本記事は2026年8月時点で公開されている国税庁の資料に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。資産の処分や事業承継は金額が大きくなりやすく、譲渡所得や贈与税の判断が必要になります。実際の手続きにあたっては税理士または所轄税務署にご確認ください。
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