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2026/08/22

造園業の熱中症対策は義務です【2026年版】|夏の剪定・草刈りで事業者がやるべき3つのこと

熱中症労働安全衛生造園業草刈り剪定現場管理

真夏の草刈りや高木の剪定は、造園業の仕事の中でもっとも体にこたえる作業です。その熱中症対策が、2025年6月から事業者の法律上の義務になりました。

「気をつけろと声をかけている」だけでは足りません。あらかじめ決めて、紙にして、作業する人に伝えておくことが求められます。しかも対象になるのは自社の従業員だけではありません。

この記事では、造園業の現場で何をすればよいのかを、厚生労働省の通達をもとに整理します。

何が義務になったのか

労働安全衛生規則が改正され、令和7年(2025年)6月1日から施行されました。厚生労働省の通達は、事業者に次の2つを義務付けたと説明しています。

1 事業者が熱中症による健康障害を防止するために講ずるべき体制整備と関係作業者への周知

事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者が当該作業に従事する他の者に熱中症が生じた疑いがあることを発見した場合にその旨を報告させる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならないこととしたこと。

2 事業者が熱中症による健康障害を防止するために講ずるべき措置の実施手順の作成と関係作業者への周知

事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体冷却、必要に応じての医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその手順を周知させなければならないとしたこと。

— 厚生労働省労働基準局長通達「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(基発0520第6号・令和7年5月20日)

やることは大きく3つです。

  1. 報告体制を決める — 誰に、どうやって知らせるか
  2. 対応手順を決める — 見つけたら何をするか
  3. 作業する人に周知する — 決めただけでは足りない

夏の造園作業はほぼ対象になる

「うちは対象なのか」がまず気になるところです。通達は対象を次のように定めています。

イ 「暑熱な場所」とは、湿球黒球温度(WBGT)が28度以上又は気温が31度以上の場所をいい、必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含む趣旨であること。

また、「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、上記の場所において、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業をいうこと。

— 同通達

造園業に当てはめると、こうなります。

条件 造園業の実態
WBGT28度以上または気温31度以上 真夏日の屋外作業はほぼ該当
継続1時間以上または1日4時間超 半日以上の剪定・草刈りは該当
場所を移動する作業も含む 午前A邸・午後B邸という回り方も含まれる

つまり7〜8月の剪定や草刈りは、ほぼ確実に対象です。「うちは小さいから関係ない」という話ではありません。夏場にどんな作業が集中するかは「造園業の繁忙期・閑散期対策ガイド」で、樹種ごとの作業適期は「庭木の剪定時期カレンダー」で整理しています。

暑さの判定は現場で実測するのが原則ですが、通達は屋外作業について次のように認めています。

例えば、通風のよい屋外作業について、天気予報(スマートフォン等のアプリケーションによるものを含む。)、環境省の運営する熱中症予防情報サイト等の活用によって判断可能な場合には、これらを用いても差し支えないこと。

— 同通達

WBGT計を買わなくても、スマホの天気予報で判断してよいということです。

🔴 応援に来た人も「作業者」に含まれます

造園業でいちばん見落としやすいのがここです。義務の対象になる「作業者」の範囲を、通達はこう定めています。

エ 「当該作業に従事する者」(以下「作業者」という。)とは、労働者だけでなく、労働者と同一の場所において当該作業に従事する労働者以外の者を含むものであること。

— 同通達

繁忙期に応援を頼んだ一人親方、手伝いに来た知り合いの職人、下請けの作業員。雇用関係がなくても、同じ現場で作業していれば対象に含まれます。人を集めて回す夏の現場ほど、決めごとを共有しておく必要があります。

現場で何を決めて、どう伝えるか

法律の文章のままでは動けないので、造園業の現場に落とし込みます。紙1枚にまとめて、朝礼で配るか現場車に貼っておけば足ります。

1. 報告体制(誰に、どうやって)

  • 具合が悪くなった本人、または異変に気づいた人は、その場ですぐ現場責任者に伝える
  • 現場責任者の氏名と携帯番号を明記する
  • 責任者が不在のときの連絡先も書いておく

「言いにくい雰囲気」が事故につながります。とくに年配の職人ほど「これくらい平気だ」と我慢しがちなので、報告は義務であって遠慮ではないと伝えておくことが大事です。

2. 対応手順(見つけたら何をするか)

通達が挙げているのは、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察、そして緊急連絡網と搬送先です。造園の現場向けに書くとこうなります。

  • すぐ作業をやめて日陰か車内に移す(エアコンをつける)
  • 首・脇の下・脚の付け根を冷やす。氷やアイスパックがなければ水をかけて風を送る
  • 水分と塩分をとらせる。自分で飲めない、返事がおかしい場合はすぐ119番
  • 緊急搬送先: 現場ごとに最寄りの救急病院の名前・電話・住所を書いておく
  • 一人にしない。目を離さず、誰かが付き添う

現場が変わるたびに搬送先も変わるので、見積書や作業予定と一緒に、その現場の病院を控えておくと手間が減ります。現場ごとの段取りを見積書の段階から整理しておく方法は「造園業の見積書の書き方ガイド」にまとめています。

3. 周知(決めただけでは足りない)

法律が求めているのは「定めること」と「周知させること」の両方です。朝礼で口頭で伝えるだけでなく、紙を渡す、現場車に貼る、写真を撮って作業グループのチャットに流すなど、あとから「伝えた」と示せる形にしておくと確実です。

一人親方(従業員がいない場合)はどうなるか

労働安全衛生法の義務は「事業者」に課されるものなので、従業員を雇っていない一人親方に、この規則がそのまま適用されるわけではありません。なお、これは安衛法の「事業者」(労働者を使用する者)という枠組みからの整理で、今回の通達自体は一人親方について直接触れていません。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。

ただし現実には、次のような形で関係してきます。

  • 元請けの現場に入るとき: 元請け事業者にとってあなたは「同一の場所で作業に従事する労働者以外の者」に当たるため、元請けが定めた体制と手順の対象になります
  • 応援を頼んだとき: 自分が人を呼んで同じ現場で作業させれば、その現場の段取りを決めるのは自分です
  • 自分の身を守るため: 一人で作業中に倒れると発見が遅れます。家族や取引先に作業場所と終了予定時刻を伝えておく、こまめに連絡を入れるといった備えは、義務とは別に必要です

なお業務中の事故やケガに備えるなら、一人親方も労災保険に特別加入できます(厚生労働省「労災保険への特別加入」)。

高齢の職人がいる現場で気をつけること

造園業は経験がものを言う仕事で、60代・70代の職人が現役という現場は珍しくありません。年齢が上がるほど、次のような理由で熱中症のリスクが高まります。

  • のどの渇きを感じにくくなり、水分をとる回数が減る
  • 汗をかきにくくなり、体温が下がりにくい
  • 持病の薬(利尿薬・降圧薬など)が影響することがある
  • 「昔はこれくらい平気だった」という感覚が、いまの体と合わない

真夏に無理をしてでも数をこなそうとする背景には、繁忙期に売上が偏る造園業の構造もあります。閑散期の仕事の作り方は「造園業の集客方法まとめ」も参考にしてください。

対策として現実的なのは、本人の申告を待たないことです。時間を決めて全員で休憩をとる、飲んだ量を声に出して確認する、午後いちばんの気温が高い時間帯は作業内容を軽いものに入れ替える。段取りで解決するほうが、精神論より確実です。

よくある質問

Q. 従業員1人でも義務の対象になりますか?

労働者を使用する事業者であれば、人数にかかわらず労働安全衛生法の適用があります。「小規模だから対象外」という区切りはありません。

Q. WBGT計を買う必要がありますか?

屋外作業については、天気予報や環境省の熱中症予防情報サイトで判断してよいと通達に明記されています(上記引用)。まず判断できる方法を決めておくことが大切です。

Q. 決めた内容はどこかに届け出るのですか?

届出の制度ではありません。事業場ごとに定めて、作業する人に周知することが求められています。

Q. 熱中症が起きたら労災になりますか?

業務に起因する熱中症は労災保険の対象になり得ます。判断は所轄の労働基準監督署が行うため、発生したら速やかに相談してください。なお作業に必要な資格や許可については「造園業の資格・免許一覧」で解説しています。

出典

免責

本記事は2026年8月時点で公開されている厚生労働省の資料に基づく一般的な解説です。個別の現場での適用や、実際に熱中症が発生した場合の対応については、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

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